2015年2月9日月曜日

大阪のおばちゃんとドン・ファンの教え


「あんたどっちが欲しいの? どっちでもできるわよ」
「えっ! ああ、では消費税反対ってことで?」
「そりゃ、こんなデフレ経済の中で増税したら・・・ぺらぺらぺら・・・」
「じゃあ、賛成では?」
「あんたなあ、国の借金が1000兆円を越えて、社会保障費が・・・・ぺらぺらぺら・・・」
 見事にどちらも語りつくしてくれる。
 消費税の8パーセント増税前に論議の盛んなころ、テレビを見ていたら大阪の街頭で、おばちゃんにマイクを向けたシーンだ。
 記者の顔をにらんだ大阪のおばちゃんは、にやにやと笑っている。
「このおばちゃんのアイデンティティはどうなってるんだろう?」。
 大阪のおばちゃんには感心させられる。なにがって、ドン・ファンの言う「履歴を消す」を実現しているからだ。
 カルロス・カスタネダの”ドン・ファン”シリーズは、ニューエイジや精神世界のバイブルのひとつで、日本でもよく読まれているので説明はいらないだろう。ヤキ・インディアンの呪術師の世界を描いていた。そして、呪術師への階梯における第一の課題が「履歴を消す」だった。
 ふつう、人は社会的な履歴にしばられている。職業、階級、学歴,、資産、経歴などによって構成される履歴だ。そして、履歴と人格、アイデンティティが一体化している。
 消費税の賛成、反対も、そういった履歴=人格に縛られた反応をするのがふつうだ。ところが、大阪のおばちゃんは、そんなものを微塵も感じさせない。
 大阪のおばちゃんは、まぎれもなく大阪のおばちゃんなのだが、大阪のおばちゃんの履歴をうかがい知ることができないのである。まぎれもなく呪術師の第一の課題をクリアーしている。
「履歴を消」せるのは、概念では生きてないからだ。近代の文明人は、教育(調教)された人格者である。それぞれの履歴に見あった人格で生きている。その分、概念のフィルターがかかっているので、エネルギーをあるがままに見ることができない。
 呪術師になるには、文明人の概念のフィルターを外すことが求められる。古代人のように、あるがままの自然にふれるためだ。
 大阪のおばちゃんは、ドン・ファンに教えられることもなく、履歴や概念では生きていないのである。しかもすごいことは、「概念」を自由自在に使いこなしているということだ。          
「呪術師」というと前近代の蒙昧な存在と思われるかもしれない。文明人でなけば概念操作はできないと。しかし、大阪のおばちゃんは、呪術師であり、かつ概念操作にも長けているのである。
 大阪のおばちゃんはポストモダンを実現しているのだ。だから大阪のおばちゃんは、すごい。恐るべしなのである。

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