獅子舞の獅子は、普通、百獣の王ライオンとされる。文献的にも、日本書紀に中国から入ってきた神楽のことが記されている。さらにインドやペルシャにその起源はさかのぼると解説される。
獅子舞中国伝来説に対して、民俗学者の柳田国男が異を唱えている。
「自分が所謂(いわゆる)獅子舞のシシを以て天竺の獅子ではあるまいと思ふ理由は段々あるが、最初に心付いたのは或地方の獅子舞に用ゐるシシ頭には鹿同然の角のあることである」(柳田国男『獅子舞考』)。
シカの角のあるシシ舞を見て、これはライオンではない。シカだ。シカをシシ頭に舞っているシシ舞は、日本固有の神楽だ。イノシシ頭のシシ舞も存在する。
「此等の例を以て見ると、獅子舞のシシと云ふ語にも少なくも或混同がある。即ち獣肉を宍(しし)と云ふより転じて、鹿即ちカノシシを単にシシと呼んだ時代もあれば、猪即ちヰノシシを単にシシと云ふ地方もある。」
ここで思い出すのが、フトマニやホツマツタエから読み取れるシシ舞の起源だ。
「意の折れを 猿田が獲りて 神楽獅子 よこ魔を祓う ヨヨの神風」(イオレ・フトマニ)
猿田彦が四国に渡った時の出来事。猪の食害に困っていた住民を助けるために、猿田彦が猪を捕獲。なんでも食べる猪なら魔物も食べてしまうだろうと、猪の頭をかぶって踊った。それが神楽獅子の起源であるということがホツマツタエから読み取れる。天孫降臨に登場する猿田彦に由来する話なのだから、当然、仏教伝来のはるか以前の話だ。柳田国男のシシ舞日本固有説と符合することになる。
さて、その真偽を証明することはできないのだが、ここから次のようなことが考えられる。
日本固有の神楽舞が存在したと考えることは十分にできる。そこに中国から仏教とともに最新流行のライオンダンス神楽が入ってきた。これを見た人々は、これは面白いと受け入れた。そして、日本固有の神楽にライオンダンスを取り入れた。シカやイノシシのダンスは、その後、すたれてしまった。伝統保守派が、頑固に伝統を保存することで、わずかに残った。柳田国男が見たものだ。
現代の獅子舞は、中国伝来の獅子舞と日本固有のそれとのハイブリッドなのである。
これってイイトコ取りして、何か新しいものを生み出す、日本人のやり口の典型的パターンではないだろうか? 良くも悪くも日本文化の一つの特徴がうかがえる例と言えそうだ。
さて、ここで話を「田村けんじの獅子舞」に戻そう。
いくつものバリエーションのある獅子舞だが、全国で広く舞われる演目に「三匹獅子舞」がある。「ガガトリ(雌鹿子争い)」、つまり、1頭のメスを2頭のオスが争うという内容の演目だ。
結婚式の余興の「田村けんじの獅子舞」は、どうもこの「ガガトリ」の負けたほうのオスに見えてならない。壇上の新婦をめぐって争い敗れた、もう一匹のオス。彼も、実は新郎候補だった。しかし、彼は負けたのだ。門出に立つ二人を前に、敗北を認め、ライバルのオスジカにエールを送っているのだ。
シカやイノシシからライオンへと頭が変わったハイブリッドの獅子舞が、現代も舞われている。変わることのないシャーマンとして・・・。
0 件のコメント:
コメントを投稿